法律を中心に、ビジネスについて思ったことをコメントします。今は海外にいて、その前は東京で働いていました。
少し前になりますが、WSJにこのような記事がありました。
Banks Get Tougher on Credit Line Provisions
不況のせいで3年や5年のリボルバーのコストが上昇したため、364日ファシリティの設定が増えているということです。
割合の変遷について、WSJからグラフを孫引きすると、以下のとおり。
ここでいうリボルバーとはコミットメントライン契約の一種です。コミットメントラインというは、借り手がフィーを支払う代わりに貸し手が一定の融資枠を設定し、その限度額の範囲内においては一定の期間、貸し手が貸し出し義務を負う契約形態のことです。リボルバーというのは、その枠の範囲内で何度でも実行可能となるものを言います。つまり、一度限度一杯借りてしまっても、返しさえすれば返済した分の枠の限度で再度借りることができます。
借り手にとっては、手元資金が不足した場合の流動性リスクを回避する手段として、また、無駄な有利子負債が減り、資金効率が改善されるため、広く活用されています。
上記の図にもあるとおり、アメリカでは、364日、3年、5年の期間設定が主流です。
364日ファシリティが用いられる理由は、BIS規制上、複数年のファシリティよりもリスクウェイトが軽く済むからです。バーゼルIのときは0%、バーゼルIIになってから原則20%となりました。複数年になってくると50%になってしまいます。リスクウェイトが増えると自己資本比率計算の分母が膨らんでしまうので、銀行としては364日ファシリティを使って分母を少しでも減らそうとするわけです。逆に借り手の企業側からすると、ファシリティの期間が短いと、いちいちそのたびごとに与信審査をされることとなるので、それよりは長期のファシリティを一度に締結してしまうことが望ましいこととなります。プロスポーツ選手の複数年契約みたいなもんですね。
しかし、リスクウェイトがあがると、当然コストが上乗せされるわけで、長期間ファシリティのフィーも高くなります。こちらのレポートによれば、2003年の平均で見た場合、364日ファシリティが11bps、1年以上のファシリティが18.4bpsというデータがあります(bpsとはベーシスポイント(ツ)の略。1%の100分の1です)。
WSJの記事では、銀行が先の見えない情勢から短期でのコミットメントを好み、コミットメントフィーが特に長期契約では高くなっているとのことです。逆に、好況時は借り手の交渉力があがり、長期のコミットメントが成約しやすいといえそうですね。
ところで、このWSJの記事を読んでちょっと引っかかったことがありました。
日本の短期のコミットメントラインの期間としては、364日のものもあれば、1年のものもあるかと思います。他方で、アメリカでは364日が確立したマーケットプラクティスといえると思います。
で、実はBIS規制上は、1年以下のものについてリスクウェイトが軽減されるので、コミットメント期間が1年きっかりであっても問題ないはずです。でも、上記のレポートの分類からすると、アメリカの銀行は1年以上のコミットメントについては高いフィーを取ることとなっているようです(銀行の内規上どうなっているかは不明)。1年きっかりのものも高くとる合理的な説明ってあるのでしょうかね?ま、おそらく1年間のものはほとんどないのであまり関係ないのだと思いますが、逆に364日にそこまで統一する意味は何なのでしょうか。
と、そんなことを考えるうちに、昔の体験を思い出してしまいました。
あれは、一時期アメリカの地方都市に住んでいた時の話(て、それほど昔ではありません)。
アメリカで車の免許をとろうと申請に行ったところ、その州で免許の申請する資格として、「1年以上の米国滞在資格を有していること」というのがありました。私のビザの期間は、「●年4月11日から●+1年4月10日まで」というような形で記載されていたので、まあいけるだろうと思って窓口に行ったわけです。そうすると、窓口のオジさんに、
オ「これは1年じゃないから駄目」
と駄目出しされてしまいました。以下やり取り。
私「なんで?このビザは1年のビザとして発行されたし、11日が1日目だから次の年の10日までで365日ですよ?」
オ「いや、違う。う~ん、そうだ!ユーの誕生日はいつだ?」
私「△月△日だけど。」
オ「じゃあ、次の誕生日で1つ歳をとるのはいつだ?」
私「そら△月△日ですよ。」
オ「ほら!」
私「(何がほら!や・・・)だから、誕生日を二度カウントしたら365日すなわち1年になりませんがな。」
オ「とにかく駄目。」
私「責任者呼んでちょ。」
オ「俺が責任者だ。」
私「このビザが法律上1年間のものとして発行されているものだって知ってる?」
オ「俺はキチンとトレーニングを受けている。とにかくこのビザの期間では駄目。」
11日から翌年同月11日までになっていないのが気に入らなかったらしく、とにかく駄目の一点張り。20分程粘ったのですが、後ろに長蛇の列ができてしまい、埒が明かないので退散しました。
落ちついて考え直しましたが、どう考えても1年間の要件はクリアしていると思ったので、少し遠いけど別の免許センターに行って試してみることにしました。その結果は・・・
何も言われず余裕で発行!
日時の数え方が統一されてないのかなんなのか良く分かりませんでしたが、結果オーライ。
・・・ということがあったので、コミットメントラインの期間を1年間にしていないのは、日時計算がみんな様々なので、混乱することを避けるために一日余裕を見ているのか?と勝手に妄想しています。
ではでは。
Author:lenzabile
M&Aとファイナンスを扱う弁護士です。現在海外(米国)勤務中。法律やビジネスについて思いつきを備忘録的にブログに書いていくつもりです。また、出身の関西も気になりますので、そちらの話題も追いかけます。
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