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中国のIT製品情報強制開示について

今日はこちらの記事です。

中国、ITソースコード強制開示強行へ…国際問題化の懸念
IT製品情報強制開示、中国が5月公表へ 日本は再考求める

制度の詳細がまだ良く分からないのですが、記事のとおり「拒否すれば、その製品の現地生産・販売や対中輸出ができなくなる」等ということであれば、日本のメーカーにとっては、拒否すれば魅力的な中国市場を失うし、受忍すれば知的財産流出や国家機密の危機という「進むも地獄、引くも地獄」状態になってしまいそうです。

日立の古川前社長(取締役を退任されることが決まったようですね:記事)のインタビューがありました。

中国IT規制実施なら販売停止も 日立製作所・古川一夫社長

中国が2009年5月に予定通り新制度を導入した場合には、「中国とそれ以外で(製品を)分けることを検討する状況になりうる」と述べ、中国向けの高度なデジタル製品の製造・販売を停止することも視野に検討する考えを明らかにした。

ということです(そらそうや…)。

では中国側の狙いは何なのかという点ですが、

①中国市場の魅力に抗えずに開示に応じる企業がありうるが、そういう企業にとっては、より高まる知的財産権流出リスク等への対応コストが余計にかかるので、製品が高価となり、 価格面で中国製品の中国市場での相対的競争力が上がる(もちろん知的財産権流用の可能性も無視できません)、

②開示を拒否する企業の高度な技術を用いた製品が中国では販売されなくなり、性能面で中国製品の中国市場での相対的競争力が上がる、

といういずれにいっても中国企業としては悪くない気がしますので、実はある種の「保護主義政策」なのではないかと思ったりしています。

こうなってくると政府間交渉しかないでしょうが、「知的財産権の流出に十分配慮する」といった程度の妥協にならないよう十分注視していく必要がありそうです。

あと、中国の民商法の学者が中国の知的財産権の保護水準の現状分析という論文を書いておられるのを見つけましたので、メモ。こちら。

気になった点を以下引用し、若干のコメント。

地方政府の中には、「知的財産権の保護は、外国人の利益を保護するだけだ」、「権利侵害や模倣品の製造が違法なのは知っていてもやめられない」という誤った考えを持つ者もいる。

中央政府の中はそんな人はいないんですか…特に上記規制の担当者とか。 「地方政府ではいるけど、中央には絶対いない」といえるかは正直疑問です・・・ソースコードの開示はリスキーな気がしますな。

国際条約に規定されている知的財産権の保護水準は多くの途上国が達成できる限界を超えたものになっている。例えば、「TRIPS協定」に規定される薬品の厳格な特許保護及び半導体集積回路の回路配置の保護は、中国の関連産業に大きな打撃を与え、知的財産権の保護水準が国情を超えたものとなっている。

中国は、一発展途上国として、国際条約の規定する最低保護水準を遵守するという前提の下、国内の事情に鑑みてふさわしい知的財産権の保護基準を選択し、適当な知的財産権の保護水準を確立するべきであり、徒に、先進国の高水準を追い求める必要はない。

国際条約は国情を超えているといいながら、国際条約を守りつつ国内の事情にふさわしい基準を設定というのは、ありうるのでしょうか?矛盾しているようにも読めます。

知的財産権の保護は法律問題だけではなく、政治、経済問題でもあり、・・・

中国は、今後多くの途上国と協力して、・・・機が熟したら、多くの途上国と共に途上国に適合する知的財産権の保護基準を制定していかなければならない。

もちろんこれは、一学者さんの意見ですが、これが中国である程度コンセンサスが得られるような意見だとするとして、中国市場のインパクトにもかかわらず、とりあえず発展しきるまでは途上国ルールで行きますということでは日米欧と議論はかみ合わないでしょうね。政治・経済問題であるという点は共通認識になりそうですので、日本側には政府間交渉では頑張っていただきたいと存じます。

ではでは。

PS:ざっと調べただけなのですが、アメリカではそれほど盛んには報道されていないような気がするのですが(見逃しているだけかもしれません)。読売を引用しているブルンバーグの記事はありました。
こちら

 

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M&Aとファイナンスを扱う弁護士です。現在海外(米国)勤務中。法律やビジネスについて思いつきを備忘録的にブログに書いていくつもりです。また、出身の関西も気になりますので、そちらの話題も追いかけます。

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