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防衛策と信頼の裏切りと解雇権濫用論と(その1)

少々私事でバタバタしており、更新が遅れました。

さて、本日は、昨今話題になっている解雇を容易にして雇用を流動化するという主に池田先生が盛んに主張されている議論についてです。最近労務関係のことに関して時々のぞかせていただいている労務屋さんのブログにおいて詳細な検討がなされていましたので、ご紹介します。
池田信夫先生ウォッチング 連続シリーズです。

一点特に興味深かったのは、上記ブログの2月10日のエントリーにおいて、解雇規制の緩和に反対するという文脈で、

長期雇用をコミットされて企業特殊的熟練の蓄積に励んだ従業員を、本人になんら非がないにもかかわらず解雇するといった企業の機会主義的な行動は当然規制されてしかるべきでしょう。

とされている部分です。

上記ブログの論旨とは直接関係ないのですが、上のコメントを見て、買収防衛策と労働関係についてまた考えてしまいましたので、今日はその点をば。

以前のこちらのエントリーでも少し触れましたように、買収防衛策を積極的に肯定する立場の論拠のひとつとして、「信頼の裏切り仮説」というのがあります。これは、簡単に言いますと、

会社は長期雇用(将来的な昇給も含む)を暗黙に約束→従業員は会社のために企業特殊的熟練を蓄積する→敵対的買収で株主となった者がそんなこと顧みず解雇→信頼裏切られた!→信頼を裏切られる可能性があるとすると企業特殊的熟練を積もうという人はいなくなる

ということで、そのような事態を防ぐために取締役に買収防衛策の発動権を与えて、信頼を裏切るような買収から従業員を守らせるという議論です。

この仮説を根拠とする防衛策の導入に反対する立場からすると、従業員の長期的コミットの保護については、解雇権濫用法理(使用者側が解雇権を濫用した場合には解雇を無効とする判例によって蓄積され法律にも盛り込まれた法理です)で保護すべきであって、取締役が保身のために濫用するかもしれない買収防衛策によって保護する問題ではないということになります。

で、上記の労務屋さんのお話からすると、企業特殊的熟練の蓄積に励んだ従業員の期待の保護は解雇権濫用法理による保護で十分という感覚を労務実務の方々はお持ちなんだろうかと思った次第。

そんなことを思ったりしまして、改めて、企業特殊的熟練の蓄積に励んだ従業員の期待の敵対的買収者からの保護は、解雇権濫用法理だけで十分なのか、防衛策による必要があるのか?ということを考えたのですが、「判断時点」の観点からも防衛策の利用は分が悪いかもなどとふと思うにいたりました。
その2に続く)

 

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[T1] ティン・パラシュート

解雇権濫用法理に関連して、lenzabileさんから買収防衛策との関係で興味深いトラックバックをいただきました(コメントも頂戴しておりました。ご回答が遅くなり申し訳ありません)。ここで回答させていただきます。 まず、引用します。 …買収防衛策を積極的に肯定する立場

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Author:lenzabile
M&Aとファイナンスを扱う弁護士です。現在海外(米国)勤務中。法律やビジネスについて思いつきを備忘録的にブログに書いていくつもりです。また、出身の関西も気になりますので、そちらの話題も追いかけます。

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